天然色素/天然着色料一覧

ビートレッド(赤ビート色素)

名称 ビートレッド(アカビート色素)/Beet red
概要 「本品は、ビート(Beta vulgaris L.)の果実から得られた、イソベタニン及びベタニンを主成分とするものである。デキストリン又は乳糖を含むことがある(第9版食品添加物公定書)」
INS No. 162
E No. E162
色調 赤~赤紫色
染着性
溶解性(水)
溶解性(油) ×
耐熱性 ×
耐光性
金属の影響 なし
タンパクの影響 なし
分類 既存添加物/食品添加物公定書
特徴 海外で使える国が多い/耐熱性弱い
ニチノーカラー ビートレッドCG30(粉末)
食品への表示例 ビートレッド、アカビート色素、アカビート、野菜色素
使用基準 本品は以下の食品には使用できません。1.こんぶ類、食肉、豆類、野菜類、わかめ類(これらの加工食品は除く)。2.鮮魚介類(鯨肉は除く)、茶、のり類

来歴

 ビートレッドの原料作物であるビートは、地中海の沿岸地方が原産で、元々は薬用として、発熱や便秘の治療に古代ローマ人が用いていたと言われています。通常食用とする根部分の色や見た目はカブやダイコンに似ていますが、これらの野菜はアブラナ科なのに対してビートはヒユ科と異なる科目になります。

 ちなみに従来ビートはアカザ科に分類されていましたが分類体系が変わり、現在はヒユ科と統合してヒユ科として分類されています。元々のアカザ科の中にはビートの他にホウレンソウやオカヒジキ、アッケシソウなどがあります。 

 ビートは非常に種類が多く、葉を利用するもの、根を利用するものとさまざまです。根を利用する品種では、通常は表皮は赤く、肉色は赤、白、灰色などがあります。その中で、色素用に用いるのはテーブルビートとしても知られている、表皮、肉色共に赤色のビートです。ビートは耐寒性が強く冷涼な気候を好むことから18世紀にはヨーロッパ全土に広まり、主に料理に用いられてきました。特に有名なのはテーブルビートを用いたロシア料理の「ボルシチ」ですが、その他にもピクルスなどの漬物やワインの着色にも用いられています。 

 そのような背景から世界的、特に欧米では馴染みが深く、アメリカやEUの食品添加物リストの中にも含まれているのはもちろん、中国でも使用対象食品を限定せずに使用できる数少ない天然色素としてリストに載っています。

 その他、色素はありませんがビートの仲間としては砂糖の原料作物として栽培されるてん菜(甜菜)があります。日本では主に北海道で、サトウダイコンとも呼ばれ砂糖の生産用に栽培されています。

色素

 カブやダイコンと異なる作物であるビートは、赤色の色素を持ちますが、アントシアニンとは異なり、ベタニンやイソベタニンという、ベンゼン環とピロール環が縮合した構造にグルコースがついた形を取る芳香族インドール誘導体で、ベタレイン系の色素と呼ばれる成分が主体となります。

 ちなみにベタレイン系の色素は赤ビートの他、サボテンやアマランサスの赤色にも含まれていますが、日本で食品添加物(着色料)として認められているのはビートレッドのみになります。

興味深いことにアントシアニンを持つ植物はベタレイン系色素を持たず、またベタレイン系色素を持つ植物はアントシアニンを持たないとされています。

特徴

 ビートレッドは鮮明な赤色の水溶性色素で、水に易溶、アルコールに可溶で油脂には不溶です。アントシアニンと同じ赤色の色素ですが、アントシアニンとは異なりpHによる色調の変化や、タンパク質による色調の変化などは見られません。その一方で、熱や対して不安定で80℃30分間の加熱でほぼ退色してしまいます。耐光性も弱いですが、アスコルビン酸を添加すると安定化することが知られています。また鉄又は銅イオンの存在下で変色する性質があります。

用途

 ビートレッドは乳飲料や明太子、チョコレートやケーキに使用されます。特に色調がアントシアニン色素よりもクチナシ赤色素などに似た青味が強い赤色で、チョコレートをピンク色に着色するため、イチゴを志向したチョコレートなどによく使われます(下写真)。

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