梅漬けの着色についてはこれまでに一度ご紹介しています(梅漬けの着色)。
梅漬けには古くから赤シソの葉が用いられてきましたが、現在市販されている梅漬けの中には合成着色料が使われているものもあります。
その一方で天然色素も使われており、最もオリジナルに近い赤紫蘇に由来する色素であるシソ色素の他、赤キャベツ色素、ムラサキイモ色素、アカダイコン色素などが用いられています。
実はJAS規格の中に梅漬けの定義があり、そこでは着色料としてアカキャベツ色素、クチナシ赤色素、シソ色素、ビートレッド及びムラサキイモ色素のうち3種以下との決まりがあります。従ってアントシアニン色素でもこれら以外の色素、又は記載があっても3種以上色素を使用している場合はJAS表示品としては扱えません。(但しJAS規格外品としての使用は問題ありません)。
また、一概に梅の漬物といってもこの表にあるように製法によって梅干し、調味梅干し、梅漬、調味梅漬け、カリカリ梅など様々なものがあります。その中で今回は調色を行う工程がある「調味梅漬」を試作しました。
今回は4種類のアントシアニン色素(アカキャベツ色素、シソ色素、アカダイコン色素、ムラサキイモ色素)を使い、漬けおきする調味液中の色素の濃度を濃い場合(1~1.5%)、薄い場合(0.4~0.5%)の2通りで着色を行いました。
(いずれも添加した色素の量は一緒にしました)
その結果、写真ではやや分かりにくいですが、それぞれ以下の特徴がみられました。
【シソ色素】
梅と赤シソの組み合わせは最もオーソドックスな組み合わせで、あたり前ですが梅漬けに用いた場合もいわゆる梅干しに最も近い赤味が強い色になりました。元々赤紫系の色合いのため、同量の色素を加えた場合では濃く見えるのが特徴です。
【アカキャベツ色素】
市販されている梅漬けで多く使われているアカキャベツ色素は、色素の安定性や価格面で有利な特徴があります。シソ色素に似た色合いになりますが、ややくすんだ色あいになる傾向がみられます。
【アカダイコン色素】
今回試作で用いた色素の中でアカダイコン色素は元々の色合いがやや異なります。写真では分かりづらいですがシソ色素と比べて明るく、やや黄色味のある色調になりました。同濃度の色素を添加した場合では薄くみられるかもしれません。
【ムラサキイモ色素】
ムラサキイモ色素はアントシアニン色素の中ではシソ色素と似た赤紫系の色合いが特徴です。写真では分かりづらいですがアカキャベツ色素よりもくすみがすくなくシソ色素と似た色調を示しています。アントシアニン色素の中では安定性も高く使いやすい色素です。
<梅の塩漬け>
完熟梅 20kg
粗塩(梅の15%) 3kg
ホワイトリカー 適量
色素(下表参照)
<色素>
※色素濃度は調味液に対して
シソ色素 | ニチノーカラー R-S220A | 750g(1.5%) |
アカダイコン色素 | ニチノーカラー R-R610A | 300g(0.5%) |
アカキャベツ色素 | ニチノーカラー 赤キャベツ色素N | 200g(0.4%) |
ムラサキイモ色素 | ニチノーカラー 紅イモ色素M | 200g(0.4%) |
<作り方>
① 梅を水に4~5時間漬けてあく抜きする。
② ざるにあげて、清潔なタオルなどで水気をなるべく取る。
③ なり口についている枝を取る。
④ 殺菌した容器に粗塩一握りを敷き、その上から梅を並べ入れる。
⑤ 塩と梅を交互に入れ、最後に塩を多めに入れ、その上からホワイトリカーを回しいれる。
⑥ 容器をあおって塩を全体になじませる。
⑦ 消毒した落し蓋をのせ、重石(梅の量の2倍)を載せる。
⑧ ときおり容器をあおって塩を溶かす。4~5日で白梅酢があがってくる(塩漬け梅)
⑨ 塩漬け梅を水にさらして脱塩する。
⑩ 調味液を作る(50L、食塩7kg、クエン酸2.5kg)。
⑪ 調味液の中に各色素を加えてよく混ぜる。
⑫ 梅と調味液を3:5の割合で漬けこむ。
⑬ 7日間静置する。
⑭ 仕上げ。