誰でも知っている代表的なお菓子であるチョコレートは普通は茶色というイメージが強いと思います。しかしながらホワイトチョコレートのように白いチョコレートがあったり、カラフルなチョコレートがあったりします。なぜこのようなカラフルなチョコレートを作ることができるのでしょうか。
基本的に茶色以外の色はホワイトチョコレートを色付けして作られますが、普通のチョコレートとホワイトチョコレートの作り方の違いは意外に知られていません。実はチョコレートの原料である、発酵させたカカオ豆をすりつぶして作るカカオマスの処理方法によって変わります。カカオマスはカカオ豆の果肉や外皮が全て入っているので茶色ですが、これを圧搾してオイルと固形物に分けると、オイル分がカカオバター、固形物がココアケーキになります。茶色はカカオ豆の外皮の茶色で、これは固形物の方に残るため、オイルであるカカオバターは白色になります。そこで、これに砂糖やミルクなどを加えて仕上げたのがホワイトチョコレートになります。一方、茶色のカカオマスに白色のカカオバターや砂糖、ミルクを加えたものが通常の茶色いチョコレートになります。ちなみに、ココアケーキは粉砕してココアパウダーとして使われます。
ちなみに、天然色素の中にカカオ色素がありますが、これは発酵したカカオ豆から希アルカリ水で抽出して得られた色素になります。カカオニブの茶色の色素のみを取り出したものと言うとイメージがわきやすいかと思います。水で抽出しているため、カカオ色素は水に溶ける色素です。
そして、カラフルなチョコレートはこのようにしてできたホワイトチョコレートや白いカカオバターを元に、着色料や色がついたパウダーを加えて作られます。
では実際にはどのような色合いになるでしょうか。チョコレートなど油脂食品の着色には本来は油溶性の着色料が用いられますが、天然色素で油溶性のものは少なく、クロロフィル(緑色)、トウガラシ色素(橙色)、パーム油カロテンなどカロテン類(黄色)など色調が限定されています。
そこで、アントシアニン系色素やクチナシ青色素などの水溶性色素を乳化剤で乳化して、油脂食品にも使用できるようにした製剤があります。そこで、これらの油溶性の天然色素と、乳化した水溶性の天然色素を用いてホワイトチョコレートに着色を行いました。
ベースとなるホワイトチョコレートは実際は若干黄色味がありますが、色素の添加量を調整することでほぼベースの色の影響が見られず色素本来の色合いを出すことができました。
カロテン類色素=黄色
アントシアニン系色素(ムラサキイモ色素、シソ色素、アカキャベツ色素、アカダイコン色素)=赤色~朱色
クチナシ青色素=青色~青紫色
トウガラシ色素=橙色
という特徴がよくわかるかと思います。
天然色素を混ぜ合わせて色合いを調整することはよく行われています。ここではアカダイコン色素の赤色とクチナシ黄色素の黄色を組み合わせて、ピンクグレープフルーツの橙色をイメージしてみました。いずれの色素も水溶性の色素を油脂に分散するようにした乳化製剤を使用しています。クチナシ黄色素の添加量を増やすと橙色に近い色になります。またアカダイコン色素はアントシアニン色素なので、pHが酸性になるほど紫味が少ない赤色を示します。
ここではアカダイコン色素の赤色とクチナシ青色素の青色を組み合わせてベリー系の紫色をイメージしてみました。いずれの色素も水溶性の色素を油脂に分散するようにした乳化製剤を使用しています。アカダイコン色素はアントシアニン色素なので、pHが中性寄りになると紫~青色になりますが安定性が悪くなります。そこでクチナシ青色素を添加して色調を整えています。実はこのような混色にしなくても、ベリー系色素そのもの(ベリー類色素)もありますが、水溶性のためそのままでは油脂食品に使えません。
混色のメリットとして、2種類の色素の割合を変えることで赤みが強い赤紫色から紫色まで、いろいろなベリーのイメージで色付けすることができるということがあります。
緑色の天然色素としてはクロロフィルがありますが、クロロフィルは安定性があまりよくなく、光があたると退色しやすい特徴があります。そこで天然色素を組み合わせて混色の緑色を作りました。ここでは青色にクチナシ青色素、黄色にクチナシ黄色素とベニバナ黄色素を使用しています。いずれも水溶性色素のため、油に分散するようにした乳化製剤を使用しています。
添加量にもよりますが、クチナシ黄色素とベニバナ黄色素の色調の違いで、クチナシを使ったほうが赤みが強く表れる傾向があります。またクロロフィルはこれらに比べて若干黄色味が表れる傾向があります。