和菓子の材料の定番であるあんこ(餡)を各種の天然着色料で着色してみました。
餡はpHが中性域であること、色付きの餡を作る際のベースとなる白餡が完全な白ではなく黄土色なため、加えた色の通りに着色しない場合がある、目的の色合いを出すのが難しい素材の一つです。
酸性下ではきれいな赤色を呈するアントシアニン系色素も、餡に使用するとくすんだ紫色になってしまいます(ここではアカキャベツ色素を使用)。この場合、クエン酸など酸を添加してpHを下げると明らかに色調が変化しますが、酸の添加量によっては酸味が出てしまう場合があるために加減が必要となります。またアントシアニン色素の中でもアカダイコン色素やシソ色素などは独特の風味があるため、それらも考慮する必要があります。
アントシアニン以外の赤色色素を用いた場合、クチナシ赤色素は比較的通常の餡に近い色調でしたが、添加量を抑えるとピンク系の色になりました。ベニコウジ色素とラック色素を加えた場合は梅干しの色に近い鮮明な赤色を、トウガラシ色素を加えた場合はオレンジ色をそれぞれ示します。
芋餡をイメージした黄色の着色にはクチナシ黄色素を使用しました。クチナシ黄色素は栗きんとんの色付けにも使われています。原料が豆とサツマイモという違いはありますがいずれもでんぷんを主体としており、サツマイモの黄色もクチナシ黄色素と同じカロテノイド色素なので、比較的それに似た色調になりました。
緑色の着色にはクチナシ黄色素とクチナシ青色素を使用しましたが、色調としてはずんだ餡に近い色になりました。ずんだ餡は通常青大豆を使用して作りますが、餡の緑色はクロロフィルによるものです。クロロフィルはあまり耐光性が良くないため、商品パッケージをショーケースに陳列しておくと退色してしまうおそれがあります。それを防ぐための補色の目的にも使用できます。
また参考までにクチナシ青色素のみで青色に着色した写真も載せました。ここでは色合いが分かるようにだいぶ多く添加しましたが、量を抑えることで清涼感がある餡ができるのではないでしょうか。
なお今回の試作はいずれも出来合いの白餡に色素を添加して加熱する方法で行いました。白餡を作る際に既に色素を加えるなど、加熱時間が長かったり製法によっては異なる色あいになる場合がありますので予めご了承ください。