合成着色料と天然着色料

天然色素・天然着色料のラベル表示

天然色素・天然着色料は法律的には食品添加物の中の着色料という位置づけであり、食品に使う場合の成分表示の方法は食品添加物のルールに従う必要があります。

食品表示法

 食品添加物のラベル表示に最も関わりがある法律が食品表示法です。食品表示法は平成25年(2013年)6月に公布され、平成27年(2015年)に施行された比較的新しい法律で、それまで食品衛生法、JAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)、及び健康増進法の3つにそれぞれ記載があって複雑だった食品表示のルールを一つに取り纏めたものになります。

 食品表示法にはその元となった3つの法律を受けて「衛生事項」(⇔食品衛生法)、「品質事項」(⇔JAS法)、「保健事項」(⇔健康増進法)に大別されます。食品添加物の表示は従来は食品衛生法の中に含まれていましたが、現在は食品表示法の「衛生事項」に含まれています(下図)。

食品添加物の表示には以下の原則があります。

①使用する添加物は原則として全て表示する。
 例えばアカキャベツ色素を0.3%、ベニコウジ色素を0.1%、クチナシ青色素を0.01%添加して食品を作った場合、クチナシ青色素の添加量がどれだけ少なくても、この3種類の色素全ての表示が必要になります。

②表示の際には、添加物に占める重量割合が高いものから順に表示する。
 例えばクエン酸3%、アカキャベツ色素を0.3%、ベニコウジ色素を0.1%、香料0.05%を使って作られた食品の表示は以下の順序になります。

名称 清涼飲料水
原材料名 砂糖類(果糖ブドウ糖液糖)
添加物 クエン酸、アカキャベツ色素、ベニコウジ色素、香料

③添加物は原則として物質名で表示するが、物質名に用途名を併せて表示する方法や、使用目的を示す一括名で表示する方法がある。

これについては以下「添加物の表示方法」を参照ください。

名称 清涼飲料水
原材料名 砂糖類(果糖ブドウ糖液糖)グレープ果汁
添加物 クエン酸、マリーゴールド色素、香料

④表示方法

 原材料と添加物は明確に区分して表示しなければなりません。具体的には以下のいずれかの方法が用いられます。

(1)表の枠もしくは罫線で分ける

名称 清涼飲料水
原材料名 砂糖類(果糖ブドウ糖液糖)グレープ果汁
添加物 クエン酸、マリーゴールド色素、香料
名称 清涼飲料水
原材料名 砂糖類(果糖ブドウ糖液糖)、グレープ果汁
クエン酸、マリーゴールド色素、香料

(2)/(スラッシュ)で分ける

名称 清涼飲料水
原材料名 砂糖類(果糖ブドウ糖液糖)グレープ果汁 / クエン酸、マリーゴールド色素、香料

(3)改行して分ける

名称 清涼飲料水
原材料名 砂糖類(果糖ブドウ糖液糖)グレープ果汁
クエン酸、マリーゴールド色素、香料

実際の食品のパッケージを見ると、(2)の方法で表記されている場合が多いようです。

添加物の表示方法

 添加物の表示が分かりづらいと言われる一つの原因として、同じ添加物でも書き方がいろいろあるということがあります。実際には添加物の表示には以下の4つのルールがあり、3通りの表示方法があります。
 ①物質名による表示方法
 ②物質名に用途名を併記する表示方法
 ③一括名による表示方法
 ④表示が免除される

 以下、それぞれについて説明します。

①物質名による表示方法
 添加物は原則としてその物質名を表示します。天然着色料を例にすると以下のようになります。

名称(物質名) 別名 簡略名又は類別名
アナトー色素   アナトー
カロチノイド
カロチノイド色素
カロテノイド
カロテノイド色素
ウコン色素 クルクミン
ターメリック色素
ウコン
カカオ色素 ココア色素 カカオ
フラボノイド
フラボノイド色素
クチナシ黄色素   カロチノイド
カロチノイド色素
カロテノイド
カロテノイド色素
クチナシ
クチナシ色素
クロシン
クロロフィル   葉緑素
コチニール色素 カルミン酸色素 カルミン酸
コチニール
パーム油カロテン パーム油カロチン
抽出カロチン
抽出カロテン
カロチノイド
カロチノイド色素
カロチン
カロチン色素
カロテノイド
カロテノイド色素
カロテン
カロテン色素
ムラサキイモ色素   アントシアニン
アントシアニン色素
野菜色素
アカキャベツ色素 ムラサキキャベツ色素 アカキャベツ
アントシアニン
アントシアニン色素
野菜色素

クチナシ黄色素やパーム油カロテンなどのカロテノイド色素は、簡略名又は類別名としてカロテノイド(カロチノイド)としての表記が可能です。

 またムラサキイモ色素やアカキャベツ色素など、簡略名または類別名として「野菜色素」の表記が可能です。なおその他に野菜色素という表記が可能なのは、「トマト色素」「ビートレッド」「ムラサキヤマイモ色素」「アカダイコン色素」「シソ色素」になります。

 その他、横断的に「アントシアニン色素」「果実色素」「ベリー色素」などと表示ができる場合があります。詳細についてはお問い合わせ下さい。

②物質名に用途名を併記する表示方法

 ここで言う用途名とは添加物の添加目的を示すものです。着色料を含む8種類の用途については、物質名とその用途名を併せて表示しなければなりません。
(例):ビタミンC → 酸化防止剤(ビタミンC)

但し着色料については例外があり、物質名に「色」という言葉を含む場合には、用途名(着色料)の表記が省略することができます。
(例):シソ色素 → 既に「色」が含まれているので着色料(シソ色素)とする必要はなく、「シソ色素」のみでよい

③一括名による表示方法

 添加物の表示は個々の物質名を全て表示することが原則ですが、香料のように複数の成分の組み合わせで全成分表示する必要性が低いものについては一括表示が認められています。代表的なものとしては「ガムベース」「かんすい」「酵素」「香料」などがあげられます。
 着色料についてはこのルールに該当するものはありません。

④表示が免除される場合

 栄養強化の目的で使われたり、加工助剤あるいはキャリーオーバーのいずれかに該当する場合は、その添加物の表示は免除されます。
 但し、免除される添加物の中に特定原材料(アレルゲン物質)が含まれる場合については、特定原材料に由来する添加物として表示を行う必要があります。

 着色料については例えば以下の例が考えられます。

【栄養強化】

 パーム油カロテンの主体であるβカロテンはビタミンとして強化剤の目的でも使われます。従って、栄養強化の目的でパーム油カロテンが配合されている場合、着色料としての表示が免除されます。

名称 ビタミン類含有食品
原材料名 サフラワー油
添加物 ビタミンC、デュナリエラカロテン、ニンジンカロテン、着色料(マリーゴールド色素)、香料

【加工助剤】

食品を加工する際に用いられる原材料を加工助剤と言います。正確には以下の3つのいずれかに該当するものを示します。

①食品の完成前には除去されるもの
(例)濾過で使用される珪藻土は最終食品になる前には取り除かれる。

②最終的に食品に通常含まれている成分と同じになり、かつその成分量を増加させるものではないもの
(例)ビールで使用する原料水の水質を調整するための炭酸マグネシウム

③最終的に食品中にごくわずかな量しか存在せず、その食品に影響を及ぼさないもの
(例)プロセスチーズを製造する際に炭酸水素ナトリウム(重曹)を使用しても、製造時の加熱工程でそのほとんどが分解してしまうため、最終食品への残存はごくわずかになる。

【キャリーオーバー】

 キャリーオーバーは、「食品の原材料の製造又は加工の過程において使用され、かつ、当該食品の製造又は加工の過程において使用されないものであって、当該食品中には、当該添加物が効果を発揮することができる量より少ない量しか含まれていないもの」のことを示します。

 具体例としてよく用いられるのは、保存料(安息香酸Na)を含む醤油で味付けしたせんべいの原材料表示です。この場合、保存料は醤油に対して効果を及ぼしますが、せんべいに対してはわずかな量となり効果は発揮できません。この場合、せんべいの原材料表示上、この保存料はキャリーオーバーとなり表示する必要はありません。

 しかしながら着色料の場合、着色料自体をキャリーオーバーとみなすのは通常難しいとされます。その理由として、原材料の色は最終製品でも色として効果を発揮していることが多いからです。

 例えば、上記のせんべいの例と一緒に上げられている例として、着色料(クチナシ青、クチナシ黄)を含むメロンソースを使ったメロンアイスの例があります。この場合は上記と異なり、メロンソースの色がメロンアイスに付いてメロンのように見せている、すなわち色としての効果を発揮していることになるため、キャリーオーバーは認められず、メロンアイスの原材料表示にこれらの色素の表示が必要になります。

 一方で、着色料製剤(着色料に副剤を含むもの)の色素以外の原材料や添加物についてはキャリーオーバーになることがあります。例えば以下のトウガラシ色素製剤の場合、最終食品に記載するのは色素(主剤)のトウガラシ色素のみになります。

(例)トウガラシ色素製剤の主剤・副剤の表示必要性

トウガラシ色素 表示必要
D-ソルビトール 表示不要:製剤の形態を形成するために不可欠なため(トウガラシ色素を溶かす溶剤として不可欠)
グリセリン脂肪酸エステル 表示不要:製剤の形態を形成するために不可欠なため
(乳化剤として不可欠)
α-トコフェロール 表示不要:主剤及び製剤の品質を安定化させるために必要不可欠なため
(トウガラシ色素の酸化防止剤として必要)

この場合、D-ソルビトール、グリセリン脂肪酸エステル、α-トコフェロールはいずれもトウガラシ色素製剤として必要不可欠な副剤ですが、最終食品ではこれらの効果を発揮しません。従っていずれもキャリーオーバーの扱いになります。

参考資料:
新 食品添加物表示の実務2017((一社)日本食品添加物協会、食品添加物表示問題連絡会共著)
改訂6版食品表示検定 認定テキスト・中級((一社)食品表示検定協会)

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