名称 | クチナシ赤色素/Gardenia red |
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概要 | 「本品は、クチナシ(Gardenia jasminoides J.Ellis(Gardenia augusta Merr.))の果実から得られたイリドイド配糖体のエステル加水分解物とタンパク質分解物の混合物にβーグルコシダーゼを添加して得られたものである。デキストリン又は乳糖を含むことがある(第9版食品添加物公定書)」 |
INS No. | なし |
E No. | なし |
色調 | 赤紫色 |
染着性 | 〇 |
溶解性(水) | 〇 |
溶解性(油) | × |
耐熱性 | 〇 |
耐光性 | ◎ |
金属の影響 | なし |
タンパクの影響 | なし |
分類 | 既存添加物/食品添加物公定書 |
特徴 | 色調変化少ない |
ニチノーカラー | クチナシR-50L(液体)/クチナシR-50LB(液体/R-50Lよりも赤味が強いタイプ) |
食品への表示例 | クチナシ赤色素、クチナシ色素、着色料(クチナシ) |
使用基準 | 本品は以下の食品には使用できません。1.こんぶ類、食肉、豆類、野菜類、わかめ類(これらの加工食品は除く)。2.鮮魚介類(鯨肉は除く)、茶、のり類 |
クチナシは昔から栗の甘露煮や沢庵などに使われており、色は黄色というイメージが強いと思いますが、実は食品添加物(着色料)として日本で認められているクチナシの色素は3種類あります。一つはおなじみの黄色ですが、残りの2つは赤色と青色です。
クチナシ青色素については同色素のページで説明していますが、公定書に書かれている概要には「本品は、クチナシ(Gardenia jasminoides J.Ellis (Gardenia augusta Merr.))の果実から得られたイリドイド配糖体とタンパク質分解物の混合物にβーグルコシダーゼを添加して得られたものである。」とあります。一方、ここで紹介するクチナシ赤色素は「本品は、クチナシ(Gardenia jasminoides J.Ellis(Gardenia augusta Merr.))の果実から得られたイリドイド配糖体のエステル加水分解物とタンパク質分解物の混合物にβーグルコシダーゼを添加して得られたものである。」とあります。両者を比較すると違うのはクチナシ果実由来の原料が「イリドイド配糖体(クチナシ青色素)」か「イリドイド配糖体のエステル加水分解物」かというところのみです。
実際のところも、クチナシ赤色素/青色素の原料はいずれもゲニポシドで、クチナシ青色素は酵素により糖を外してゲニピンにして、それにタンパク質のアミノ基が結合して作るのに対して、クチナシ赤色素はエステル加水分解という処理でゲニポシドのメチル基(-CH3)を分解した後に酵素処理とタンパク処理を行います。このわずかな違いで赤色・青色と色調が全く変わってしまうのは不思議ですが、それぞれの色素成分については、クチナシ青色素が分子量約15000、クチナシ赤色素が分子量数千であることが報告されているものの、いずれも高分子のため、その詳しい構造は実はまだよくわかっていません。
赤色の天然色素は他にも幾つかありますが、コチニール色素は原料が虫由来だったり、ベニバナ赤色素は水に不溶で耐熱性も弱いこと、アントシアニン色素はpHが中性域では使用できないこと、ビートレッドは耐熱性が弱く使える食品が限定されるなど、それぞれ課題を抱えています。
その中でクチナシ赤色素はベリー系やビートレッドに似た少し青みを帯びた赤色の色素ですが、水溶性でpHの影響を受けず、耐熱性もよいなど、赤色の天然色素の中では使いやすい色素として注目を集めています。右の写真は蒸しパンの着色例ですが、ベーキングパウダーを使う食品はどうしてもpHが中性によるためアントシアニン色素での着色は難しいですが、クチナシ赤色素ではきれいに赤色にすることができます。また下の写真はアントシアニン色素とクチナシ赤色素をpH3とpH7の液体に溶解した様子を比較したものです。
実際には合成着色料やコチニール色素の代替としてハムやソーセージなどの食肉加工品に使われたり、イチゴやベリー系をイメージした飲料やお菓子の着色に使われています。
このようなクチナシ赤色素ですが、海外では知られていないこともあり使用できる国は韓国のみに限られています(注)。
注:海外では日本とは異なり、天然色素でも使用できる食品や最大使用量が決められていることがあるため、現地の食品添加物リストに記載があっても、目的の食品に使用できないということがあるためご注意ください。