名称 | クロロフィル/Chlorophyll |
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概要 | 「本品は、緑色植物から得られた、クロロフィル類を主成分とするものである。食用油脂を含むことがある(第9版食品添加物公定書)」 |
INS No. | 140 |
E No. | E140/E140(i) |
色調 | 緑色 |
染着性 | × |
溶解性(水) | × |
溶解性(油) | 〇 |
耐熱性 | 〇 |
耐光性 | △ |
金属の影響 | なし |
タンパクの影響 | なし |
分類 | 既存添加物/食品添加物公定書 |
特徴 | 耐熱・耐光性弱い/酸性で黄褐色になる |
ニチノーカラー | G-AO(液体/油溶性)/G-A(液体/水分散性) |
食品への表示例 | 着色料(クロロフィル)、着色料(葉緑素) |
使用基準 | 本品は以下の食品には使用できません。1.こんぶ類、食肉、豆類、野菜類、わかめ類(これらの加工食品は除く)。2.鮮魚介類(鯨肉は除く)、茶、のり類 |
植物の葉の緑色でよく知られており、別名で葉緑素とも言われているクロロフィルは、植物にとっては非常に重要な物質です。それは、植物が生きていくのに欠かせない光合成において、クロロフィルは光を吸収してエネルギーに変換する役割を持っているからです。
クロロフィルは光の中でも450nm付近(青色)と700nm付近(赤色)の光を吸収し、その間の波長(緑~黄色)は吸収せずに反射してしまいます。その反射した光が私達には緑色として見えていることになります。クロロフィルには幾つかの種類があり、植物や藻類など一般的にみられるクロロフィルaを始めとして、植物のみにみられるクロロフィルb、藻類のみにみられるクロロフィルc1、c2などがあります。
このクロロフィルは着色料として認められている天然色素の中では唯一、ポルフィリン系の構造を持つ成分です。構造式にみられるように、五員環の一か所に窒素原子を含むピロールが4つつながったテトラピロール環という環状の構造の中にマグネシウムが入っているのが特徴です。
ちなみに、このマグネシウムを化学処理で銅に置き換えたものを銅葉緑素と呼び、色は暗緑色になりますがクロロフィルよりも高い安定性を示すようになります。銅葉緑素は食品添加物として使用されており、日本では銅葉緑素として指定添加物として扱われています。ちなみに銅葉緑素には油溶性の銅クロロフィリンと、銅クロロフィリンをアルカリ加水分解して水溶化した銅クロロフィリンナトリウムの2種類があります。なお銅葉緑素は天然色素には含まれず、使用できる食品や添加量などの使用基準が別途定められているので注意が必要です。一方クロロフィルはあくまで植物から得たままの天然色素で、使用基準などもそれに従ったものになります。
クロロフィルは植物の葉が持っているありふれた成分ですが、これを商業的に色素製剤として使える量を安定的に効率よく得ようとなると、原料となる植物は限られてきます。一般的にはクロロフィル量や栽培を管理しやすいアルファルファやホウレンソウ、クロレラなどが用いられています。現在クロロフィルを自社で製造しているのは国内では数社のみで、その中で日農化学工業(株)はクロレラを原料としてクロロフィルを製造している唯一の企業です。
クロロフィルは水に不溶、アルコールに可溶、油脂に易溶な緑色色素で、着色料として認められている天然色素としては、単独で緑色を呈する唯一の色素です。上記で述べたように、テトラピロール環の中のマグネシウムが酸や光で簡単に離脱して不安定化してしまうため、耐熱・耐光性があまり強くなく、またpH5以下で褐変する性質があります。
草餅を均一に着色するのが難しいことからも分かるとおり、染着性もあまりよくないため、日本では天然色素による緑色は、クチナシ青色素など青色の色素とクチナシ黄色素、ベニバナ黄色素など黄色の色素を用いた混合色で表現されることが多いです。しかしながらクチナシ青・クチナシ黄色素は特に欧米では使用ができないため、世界的には食品を天然色素のみで緑色に着色するのは難しいとされています。その中でクロロフィルは海外でも使用できる国が比較的多い、数少ない緑色の天然色素で(韓国、台湾、香港、タイ、インドネシア、EUなど)、弱点をうまく補うことができれば海外にも展開できる可能性があるのではないかと思われます。
クロロフィルの用途として最も馴染み深いのは草餅(ヨモギ餅)ではないでしょうか。これはヨモギの葉を餅に練りこんで緑色の餅に仕上げたものですが、餅を緑に染めるこの緑色はクロロフィルによるものです。その他、色素としては主にキャンデーやチョコレートやゼリー、水産関係の加工食品の着色や、銅葉緑素の原料としても使われています。また最近ではペットフードへの利用もみられるようになっています。これは犬用のガムなど、着色以外にクロロフィルの抗菌・消臭作用を期待された商品への利用になります。